悠久の風吹く千曲市上山田

驚異的な爆発

 

 

エノラ・ゲイ号は空飛ぶ時計と呼ばれていたようだ

 

その作戦行動は細かく時間で決められていた

 

 

 

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原爆は高度9600ｍで8時15分に投下し、

 

投下して43秒後に地上約600ｍで爆発することになっていた

 

『カウントダウン・ヒロシマ』や広島市ホームページを

 

参考にすれば、

 

 

原爆は投下されるとまず8個のタイマー時計により

 

点火信号が送られる

 

続いて大気圧センサーによって電気回路が

 

接続され始動（2134ｍ）

 

それにより起動したマイクロ波レーダーが高度を測定し、

 

高度564ｍを測定すると起爆装置が働き、

 

コルダイト爆薬が爆発する

 

 

核分裂物質であるウランは臨界量（核分裂を連続で

 

起こすために必要な量）より少ない二つの塊に分けておいて、

 

爆薬によって塊をぶつかり合わせて一瞬で臨界量以上になった

 

 

タイマー時計や気圧を測定するのは早すぎる爆発を防ぐための

 

ものであったようだ

 

 

 

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原爆は8時16分に高度580ｍで目標投下地点の

 

相生橋から約200ｍ離れた島外科病院上空南東で爆発した

 

 

なお平成14年（2002）9月2日の中国新聞には放射線

 

影響研究所（放影研）の調査で高度580ｍと考えられていた

 

原爆の爆発高度は600ｍと変更した方がより正確とみている、

 

また爆心地は西へ16.2ｍずれて島外科病院南西側に

 

なると報じている

 

 

そうすると、高度600ｍで島外科病院上空の南西で

 

爆発したということになる

 

 

 

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平成27年（2015）11月30日の中国新聞を参考にすると、

 

原爆を爆発させたのはレーダー信管だという

 

原爆の前部に取り付けられたレーダー装置で地上からの

 

距離（高度）を測定して作動させた

 

レーダー信管が作動しなかった場合に備え、

 

気圧を感知する気圧信管、タイマーで作動する時限信管が

 

取り付けられていた

 

 

なお、長崎市に投下した原爆にはこれらの信管に加え、

 

地上に落ちた場合に作動する着発信管も装備されていたという

 

 

 

エノラ・ゲイ号の奇妙な飛行

 

 

投下後にエノラ・ゲイ号は奇妙な動きを見せる

 

高度9600ｍで飛行すると指定されたエノラ・ゲイ号が低く

 

飛び、急旋回を見せたのである

 

 

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原爆は投下直後には機体と同速度・同方向に

 

水平に運動している

 

やがて重力による落下分と空気抵抗分だけ機体から

 

放物線を描いて離れる

 

そのまま直進すれば爆心地に向かって進むことになってしまう

 

 

原爆はエノラ・ゲイ号の後方約14㎞で爆発していると

 

推測されるが、素早くその場を離脱しなければ、

 

エノラ・ゲイ号は爆発直後に起こる急激な上昇気流に

 

巻き込まれてしまうことになる

 

あの有名なキノコ雲である

 

 

これを避けるために原爆投下には綿密な時間指標が

 

あったのである

 

すべてをスケジュール通りにこなし、43秒以内に退避

 

しなければならなかったわけである

 

 

 

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原爆投下後にエノラ・ゲイ号は60度の傾きで

 

右に155度の急旋回を行い、速力を増すために

 

急降下しながら加速している

 

 

9000ｍ上空から爆弾を落とし、直後に155度右へ

 

急旋回するという方法は乗組員たちがウェンドーバー基地

 

などでの猛訓練によって会得した方法であった

 

 

1945年（昭和20年）2月にアメリカ国内での訓練を終え、

 

その頃に第509混成航空群の本拠地がテニアン島に決定した

 

 

部隊は順次テニアン島に移され、さらにテニアン島で

 

訓練を行った

 

それが5月末のことだという

 

特情部が謎のコールサインをキャッチした時期とピタリと

 

合ってくる

 

 

訓練を重ねてはいたが、それでも機長でありエノラ・ゲイ号を

 

操縦していたティベッツ大佐は

 

 

「衝撃波の強烈な力で機体が揺れ、機の水平を保つため

 

操縦桿を強く握りしめていた」

 

 

と言っている

 

 

 

目撃されていた急旋回

 

 

この時に科学観測機のグレート・アーティスト号は

 

ラジオゾンデという観測機器（風圧などを測る）を

 

落下させて同じく急旋回した

 

エノラ・ゲイ号が右にグレート・アーティスト号が

 

左に急旋回をした

 

 

 

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『広島原爆戦災誌』には監視兵の報告として

 

 

「殆ンド垂直旋回ニテ方向転換」

 

 

 

『高射戦史』には宇品高射砲大隊の報告として

 

 

「B29二機が広島上空に高度約九五〇〇メートルで侵入し、

 

南北で分進した。

 

南進した一機は、分進の際爆弾らしきものを投下し

 

急に高度を一八〇〇メートルぐらいまでさげている」

 

 

 

広島市の東約20㎞にある中野探照灯台の報告にはこうある

 

 

「先頭ノ一機右ニ旋回、次デ一、二秒後ノ一機左ニ殆ド垂直

 

旋回ト思ハル程ノ大角度（大傾斜ヲ伴フ）旋回ヲナシ機首ヲ

 

下ゲツゝ南下二六八度ニ於テ障害（高角七度。計算高度

 

一八〇〇米）トナリタル為眼鏡ヲ外シ右旋回ノヲ補足ス。

 

先頭機右旋回中、落下傘降下三個開クモ、最初ノ一個開カズ。

 

後続機旋回始メントスル瞬間、閃光ヲ認メタリ」

 

 

落下傘を付けて原爆を投下したようにも読めるが、

 

落下傘には観測機器が取り付けられていた

 

268度で障害とあるのは海軍式の方向表示で、

 

B29が真西の位置に来た時に木などが障害になり

 

見えなくなったということのようだ

 

 

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市の中心部では市民もそれを目撃した

 

 

『原爆体験記』では爆心地から1.7㎞で

 

 

「『ブルーン』突然屋根すれすれの高さに眼前を

 

機影が横切った。かつてないことだった。

 

『おや！B29！どこへ！』と素早く上昇して行った

 

機を求め、西方の空を仰いだ瞬間ボッ！」

 

 

 

『原爆の子』には

 

 

「突然遥か上空でB29の爆音がする。・・・

 

急に甲高い唸るような爆音に変わったので、

 

思わず上空を見上げた。B29が一機、

 

真夏の太陽の直射光を浴びてキラッとその巨大な

 

横っ腹を光らせ、青空に真白な飛行機雲を吐きながら、

 

今しも急旋回して」

 

 

とある

 

 

広島中央放送局の中庭でもそれは目撃されていた

 

爆弾を投下、そして急降下、急旋回

 

 

その時間は8時15分17秒を少し過ぎたところ

 

すべては8時15分台の43秒以内の出来事であった

 

 

 

背筋も凍る巨大な雲

 

 

写真撮影をその任務としたネセサリー・エビル号は

 

エノラ・ゲイ号らの離脱より遅れてキノコ雲の周りを

 

3回旋回していた

 

 

 

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『原爆投下』にはネセサリー・エビル号に搭乗していた

 

ラッセル・ガッケンバック氏の証言が載っている

 

 

「このときは雲はみるみる大きくなり、気が付くと私たちより

 

高い位置にまでもうもうと上がっていました」

 

 

「通常、任務を終えてテニアンに戻ってくるときは、

 

飛行機に装備されているマイクフォンを通じて、

 

よく冗談などを話しながら帰ってくるのです。

 

しかし、このときの帰りの飛行機では、

 

誰もほとんど話をすることなく、暗い気分で

 

『あの光景は本当にひどかった』という以外、

 

誰も何もいいませんでした」

 

 

 

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またネセサリー・エビル号に搭乗したボブ・キャランは

 

撮影班将校のジェローム・オーシップから

 

K-20スチールカメラを手渡された

 

原爆の炸裂する様子を一望できるのが、

 

キャランのいる尾部銃座（機体後方）だったためである

 

 

オーシップはキャランに「シャッターを押すだけでいい。

 

絞りはいじるな。目に入ったものはなんでも撮ってくれ」

 

と命じた

 

 

そしてキャランはじめネセサリー・エビル号の搭乗員たちが

 

目撃したものは、見た者誰をも震撼させる広島市上空を

 

不気味に覆ったキノコ雲であった

 

 

 

ネセサリー・エビルとは日本語で「必要悪」という意味になる

 

なんともやるせなくなる機体名である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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