嘉暦の天神
嘉暦と枯木
この石祠は「嘉暦の天神」と呼ばれている
人々はこれを「枯木の天神」と呼んでいたようだ
嘉暦は「かりゃく」と読み、鎌倉時代の年号である
特に枯れた木があったということはなかったようである
嘉暦を「かれき」と読んで、その音のニュアンスから
枯木の天神と呼んだものだろう
境界を示す祠
天神は学問の神として祀られる前は
「怒りの神」として境界を侵害されないように
境界点に祀られたものである
嘉暦と鎌倉時代の年号が与えられているが
豪族の所領の明示や荘園の境界を示す
標識の役割があったと考えられる
岩井堂山麓にあった祠
この祠は現在元の場所から移動している
元は岩井堂山北面の麓にあった
新山村と力石村の境界を示していたのである
力石側の記録には、嘉暦の天神のあった場所には
天満宮があったとしている
天神の名の由来はここにもあるかもしれない
この嘉暦の天神と同じ祠が城腰地区の
湯ノ窪という場所にもあったという
共に領分境を示すものである
村上為国の子仲綱は上山田に分地して
山田氏を称した
仲綱の子重澄は源頼朝に仕えた
『東鑑』によると、寿永元年（1182）3月5日
山田重澄は一村の地頭職を賜った
それが岩井堂山麓の嘉暦の天神から
荒砥城麓湯ノ窪の嘉暦の天神の間だという
嘉暦の天神という名は後代によるものだろう
深刻な境界争い
江戸時代には境界争いが絶えなかったようだ
いくつかの争いが松代藩に訴え出されて、
藩の裁断を仰いでいるのが記録に残っている
聞き取りによると、新山村と力石村は
たびたび境界について争っていたようだ
そのほとんどは投石などの小競り合いだったようだ
しかし時として村民同士の肉弾戦にまで発展したという
特に安永時代（1772〜1781）から幕府は重農主義の
方針をとった
松代藩もこれにならい、米穀増産・新田開発に励んだ
農業は土地を基礎とするため、耕地の境界争いは
たびたび勃発したのだろう
移動した嘉暦の天神
現在、祠は岩井堂山の西側に移動している
その理由は不明だが、バイパス開通によるもの
かもしれない
昔から天坂地区の人々が切飾りやお神酒を
あげていたと伝わっている
祠の前に置かれている小さなベルが気になる
ところである
データ
石祠（嘉暦の天神）
所在地 新山天坂岩井堂山西側
寸法（ｃｍ） 55×30
建立年代 不明
昔から嘉暦、または枯木の天神と呼ばれている
地図
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